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SHELBEE… EYE File.2 『OhBoy!』

❤︎SHELBEE EYE❤︎

File.2
ファッションフォトグラファー / 『OhBoy!』編集長:Kim Hyeon Seong キム ヒョンソン

K-POP好きなら、『OhBoy!(オーボーイ)』というフリーマガジンをご存知の方も多いと思います。ソウル全域と京畿道の一部・釜山・光州など、韓国全域にわたって無料で配布されているリーチの広さに加え、カバーや中面を飾る人気アイドルや俳優たちのそれはそれは素敵な撮り下ろしグラビアが超目玉企画。ファンならずとも“ジャケ買い”したくなるビジュアルクオリティの高さが特徴の雑誌です。

スターのグラビアをフックに、環境保護や動物愛護問題を提起するライフスタイルマガジン『OhBoy!』

しかし、そんなアイドルたちで賑わうページ以外にも、しっかりと目を向けてみてください。”環境”や“動物”など、あらゆる社会問題を幅広くクローズアップした特集記事のほうこそ、我々がじっくり読んで考えるべき内容であると気づかされます。装丁の上質な仕上がりも手伝って、ハングルが読めなくても、そのクオリティの高さや内容の濃さに誰もが驚くはず。こんなハイレベルな雑誌がどうしてフリーなのか、考えたことがありますか? その背景には、編集長であるキム・ヒョンソンさん&スタッフの「問題あふれるこの社会をなんとかしたい!」という、静かにうねるマグマのような熱い情熱が秘められているのです。

『OhBoy!』編集長キム・ヒョンソンさん。韓国ファッション界をリードするキーパーソンです

『OhBoy!』を2009年にたった1人でスタートさせ、企画・ディレクション・取材・撮影・記事執筆までをすべて手がけるのがキム・ヒョンソンさん。本業はファッションフォトグラファーで、韓国のクリエイティブ界になくてはならない重鎮です。今や韓国を代表するグループに成長したEXOのデビューアルバム『MAMA』のジャケット写真や、少年から青年へと成長するプロセスの揺らぎや儚さを見事にとらえた伝説の写真集『dIE JUNGS(少年たち)』を撮り下ろしたフォトグラファーとご紹介したほうが、K-POPファンにはなじみやすいでしょうか? EXOだけでなく、SHINee、f(x)、Red Velvet、そしてNCT各チームの全クリエイティブの指揮を執るS.M. ENTERTAINMENTを代表するアート・ディレクター、ミン・ヒジン氏に「先生」と慕われる人物です。そして厳しい競争社会を日々サバイブしているアイドルたちにとっても、キムさんに撮影されることは一種のステータス。そんな、オファーが常に絶えない超人気クリエイターが、アイドルや芸能人をフックにしてスタートさせたのが、雑誌『OhBoy!』を媒介にした、環境保護や動物愛護などの社会問題提起でした。

今年の春、ラフォーレ原宿で期間限定オープンしたポップアップストアも大成功! 日本での知名度もぐんぐん上げているキムさんにお話を伺うことができました。

これまでに78冊を発行。ソウルのカフェやショップなど130を超える場所で入手できるフリーマガジン

 

タイトル『OhBoy!』にとてもキャッチーな響きを感じます。なぜこの名前に?
「驚いたときに思わず口をついて出る、短くて簡単なフレーズですよね。『OhBoy!』を読んで、よくない環境や解決すべきいろいろな問題に気がついてもらえたら。そんな願いでつけたタイトルです」

創刊のきっかけは何だったのでしょうか?
「一緒に暮らしていた愛犬『黒水(モンムル)』が亡くなったことです。僕は生まれも育ちもソウルの弘大なのですが、母親が捨て犬や捨て猫の保護に熱心で、幼い頃からたくさんの動物と家族同然にすごしてきました。そんな動物たちのために何かしたい! と思って、動物や環境保護を訴える雑誌を作ろうと思ったんです」

日本やアメリカでも、身勝手な飼い主に虐待されたり捨てられたりする動物たちの殺処分などが大きな社会問題となっています。韓国でもそうなのですね……。
「犬や猫をはじめ動物たちは“社会的弱者”であり、彼らがそのような弱い立場に追い込まれるのは、すべて人間のせいだと考えています。だから人間が率先して問題解決に取り組むべきです。それは動物に限らず、障がいがある人や幼い人などに対してもそうです」

『OhBoy!』の広告売上はすべてチャリティだそうですね。
「はい。約70%は動物保護団体へ、約30%は環境保護団体へ寄付しています。誌面にも、そういう団体の意見広告を積極的に掲載しています」

東方神起や2PM、SHINee、TWICEなど人気K-POPアーティストのグラビアが話題。巻末では必ず、彼らと一緒に保護動物が登場します。写真は保護猫を慈しむ元SISTARのヒョリンさん

『OhBoy!』が創刊して8年めになりますが、大変申し訳ないことに、日本の読者の多くはいまだにアイドルグラビア雑誌だと思っています……。逆に韓国の読者には、キムさんの掲げる大切なコンセプトはきちんと伝わっているのでしょうか?
「おかげさまで、アイドルを通じて『OhBoy!』の活動を知り、共感してくださる方が徐々に増えています。実は、アイドルや芸能人を誌面に起用しているのは、創刊当初の戦略的な考えからなんです。動物愛護や環境保護を訴える雑誌は韓国にもたくさんありますが、興味がない人は手にすら取らない。しかし、みんなが大好きで関心の高いアイドルや芸能人が載っていれば、興味がなくても確実に中を開いてもらえますよね。ファッションやカルチャー、映画、ショップ、ライフスタイルなどの大衆的なテーマを定期的に取り上げるのもそれが理由です。入り口のハードルを下げて、本当に訴えたい問題にもまんべんなく触れてもらう。実際に、好きなアイドルに惹かれて『OhBoy!』を手に取ったことで問題意識を持ち、寄付や植樹といったチャリティ活動に踏み出す読者もいます。少しずつですが、身を結んでいることを実感しています」

アイドルをフックにされるとは、実に大胆なアイディアですね! 韓国が世界に誇るグローバルコンテンツのパワーを借りて、みんなが本当に考えるべきさまざまな社会問題に対峙するきっかけを作る。『OhBoy!』の作り方は見事に両立していますね。
「はい。アイドルや芸能人をトリガーにして、問題に関心を持つ動機を読者に与える活動をずっと続けていくのは、逆に僕にしかできない役割だと思っています。政治や経済の悪化や就職難などと異なり、環境や動物の問題は、僕たちの明日に差し迫ってくる問題ではないので、関心がある人よりない人の方が圧倒的に多いのです。そこを克服するのが『OhBoy!』の使命です」

キムさん、寡黙でめちゃくちゃ温厚でとっても優しそうなのに…熱い方ですね。
「いやあ、僕、いろいろな問題に対してけっこうしょっちゅうカリカリ怒っていますよ。デモにも積極的に参加しますし。社会に対する不満を全部話そうとすると、徹夜しても間に合いません(苦笑)」

上水洞にあるOhBoy!コミュニケーションセンターに続き、狎鴎亭洞のQUEENMAMA MARKETにも2号店をオープン。

『OhBoy!』では、雑誌の発行に加えて、ライフスタイルショップも運営されていますよね。とくに、文房具や生活用品など“日本のいいモノ”をたくさん置いていただいているのを見て、とてもうれしく感じました。
「リサイクルやエコなど、環境にやさしいコンセプトのものや、動物実験をしていないものなど“いいものを長く使ってほしい”という観点で、僕自身が本当によいと思ったアイテムだけをセレクトしています。日本には、歴史を重ねてみんなに愛されるものがたくさんあって本当にうらやましい。日本だと、雑誌でも老舗でもファッションブランドでもバンドでも“長く続けること”が一種のステータスじゃないですか。韓国にはそういう文化的背景があまり存在しないので……」

そういえばキムさんはよく“韓国には真のカルチャーがない”とおっしゃっていますよね。K-POPや映画やドラマが世界中でこんなに人気なのに!?
「確かに人気はありますが、K-POPなら海外のポップスやヒップホップ、R&B、EDMなど“今流行っているもの”を上手くいいとこ取りしてまとめたもの、そして芸能番組は日本のヒットバラエティーのコピーです。しかし“売れる!”と思ったタイミングで集中的にパワーを注ぐ勢いがものすごく強くて、センスも悪くない。しかし、そこに本当のオリジナリティはないと感じています。そして人気の寿命は大変短い。」

うーん…..韓国にはカルチャーがない……それは意外なご意見です。
「カルチャーの発達に根本的に必要である“多様性”がないんですよ。みんながみんなまったく同じものに同時期に熱中する。みんながその時スポットで『いいね!』と褒め称えるコンテンツがよいコンテンツなんです。たとえば『●万人動員した映画!』とか『●万人が使っているアプリ!』などが人気の基準であり、購買や体験アクションの絶対的動機になる。なので、ミニシアターみたいなのがなかなか根づかないんです。大韓民国の人口約5000万人のうち、4000万人もが首都ソウルに一極集中している。隣の人がいいと思っているものはみんないい。密度の高い集団パワーが生み出す国民性なのかもしれないですね」

でも、昨年秋に開催されたソウルアートブックフェアは、3日間で16000人が来場する大盛況ぶりだったと伺いました。東京よりも動員数が多いです。これは、韓国のアートやフォト、インディペンデントマガジンなど、多種多様なソウルのクリエイターが個性を競い合う場を、ユーザーがそれを楽しむ貴重な機会だったのではないでしょうか?
「確かに動員数自体は多いのですが、“話題のイベントだから行ってみよう!”という、ごくごくミーハーなお祭り気分で参加した人が多く、真剣にアートに興味があって向き合おうとやってきた人はごく少数だったと思います。しかし、魅力的で創造的なクリエイターたちがあちこちで成長しつつあり、熱心なフォロワーがついているのも事実。一瞬で消費され尽くすことなく、韓国人らしい情熱的なエネルギーでもって、己のクリエイティビティを追求してほしいですね」

最後に、キムさんの今後の野望を教えてください。
「1000年後とか1万年後とか、自分が死んだ後、僕が今訴えかけている問題が、少しでも改善の方向に向かっていればいいなと思います。『マトリックス』など、近未来の状況を描くSF映画はどれも問題を抱えていますよね。『未来の地球はヤバいに違いない』という危機感を誰もが抱えている証拠です。人間が生きていけない社会は、当然、動物たちにとっても過酷な社会となるはず。しかし、環境や動物の問題は、取り組んだからといって今すぐ状況が変わるわけではない。さらに、よくしようと思って自分が取り組むスピードよりも、目先の利益追求するあまり、環境が悪くなっていくスピードの方が断然早いのです。やる気がダウンすることもありますが、“100よりは99悪くなる方がマシ”と信じて活動しています」

【PROFILE】
ファッションフォトグラファー。韓国ファッション写真家協会会長をはじめ、慶一大学校写真映像学科教授、動物の自由連帯理事、ソウル特別市動物福祉委員なども兼任。国内外の雑誌や広告などで多くの有名俳優やK-POPアーティストを撮影し、被写体の自然な姿を映し出す。

【ABOUT 『OhBoy!』】
2009年創刊。動物福祉と環境を考えるファッション&カルチャーマガジン。年に10回発行され、ソウル全域および京畿道の一部、釜山と光州など韓国全域にわたって無料配布。雑誌のほかにセレクトショップやギャラリーも運営し、オン&オフラインを通じて、環境と動物福祉への関心を高めるために、読者との継続的なコミュニケーションを図っている。

【SHOP INFORMATION】
OhBoy! COMMUNICATION CENTER
住所:麻浦区上水洞325-1
TEL:02-324-9661
営業時間:13:00〜20:00
定休日:日・月・1/1・旧正月&旧盆

OhBoy! QUEENMAMA MARKET
住所:江南区狎鴎亭路46キル50
TEL:070-4281-3370
営業時間:10:30(日12:00)〜20:00
定休日:月・1/1・旧正月&旧盆

 

 

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