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「トッケビ」「死神」「転生」など、5つのキーワードで紐解くドラマ『鬼<トッケビ>』の世界!トッケビの魅力に迫ってみた

先日、ドラマ『鬼<トッケビ>』を視聴し終わった。1話から最終話16話まで視聴する間、トッケビと死神、幽霊たちが存在する異世界に住んでいるかのような錯覚に陥った。まるで私にも「知り合いのトッケビ」「知り合いの死神」がいるかのような、不思議な感覚。ドラマ『鬼<トッケビ>』が異世界と現実が共存する世界をリアルに描いた作品であるからであろうか。

tvN『鬼<トッケビ>』公式サイトより

各話を視聴した後は必ず韓国NAVERの記事を検索、ドラマの内容やセリフなどを確認すると共に記事に書き込まれた韓国視聴者のコメント(댓글)も欠かさずチェックした。コメント欄にはドラマの面白さや俳優の演技への賛辞と共に、脚本を担当するキム・ウンスク作家への賛辞が溢れていた。さらに「このシーンのこのセリフが伏線。次の展開はこうなるはず」とドラマの展開を予想する視聴者たちの姿も。説得力のある彼らのコメントを読み、なるほど、と膝を打ったこともしばしばあったが、ほとんどの場合、キム・ウンスク作家の果てしない想像力に度肝を抜かれることが多かった。イ・ウンボク監督の描き出す映像美、キム・ウンスク作家の生み出す珠玉のようなセリフ、コン・ユ、キム・ゴウン、イ・ドンウクを始めとする俳優陣の熱演により、一服の絵のような物語世界が広がっていく。1話ずつ放送されるたびに驚きと感動の連続であった。

ドラマの余韻が冷めやらぬ中、「トッケビ」「死神」「転生」「記憶」「切実さ」という5つのキーワードでトッケビの世界を紐解いてみたいと思う。ネタばれが気になる方はご注意ください。

tvN『鬼<トッケビ>』公式サイトより

1. トッケビ(도깨비)

コン・ユといえば、ドラマ『コーヒープリンス1号店』のハンギョル役でも有名だが、ドラマ『鬼<トッケビ>』で主人公であるトッケビを熱演、韓国にトッケビシンドロームを引き起こすと共に、TVNケーブルテレビ史上最高視聴率20%超という記録を打ち立て、再び自身の代表作を更新した。落ち着いた大人の雰囲気を醸し出す姿から子どものように愛らしくキュートな姿まで、多種多様なトッケビの姿を演じ視聴者を虜にしたコン・ユ。コン・ユ=トッケビというイメージが定着し、「깨비(ッケビ)」という呼び名まで生まれ親しまれているが、そもそもトッケビとは何なのか?

「トッケビは韓国の昔話に登場する想像上の存在である」「トッケビは人間の姿をしていたり非常に優れた力を披露したりする」「そばのムク(寒天のように固めたもの)やマッコリ、歌、いたずらが好き」などと説明されている。韓国人なら誰もが知っている昔話『흥부와 놀부』(フンブとノルブ)にもトッケビは登場する。ツバメを助けた心根の優しい弟のフンブがヒョウタンを割ると金銀財宝がざくざく出てくる一方、意地悪で欲張りな兄のノルブがヒョウタンを割るとトッケビとおばけが登場しノルブの財産を奪っていくという勧善懲悪的な物語だ。キム・ウンスク作家は何年も前からトッケビを主人公にした物語を構想し、韓国のみならず日本、アジア各国のトッケビにまつわる伝承を徹底的に調べたという。

「箒(ほうき)に変身するの?」
「トッケビのくせにこん棒持ってないの?」
トッケビの新婦であるチ・ウンタク(キム・ゴウン)がキム・シン(コン・ユ)に問いかけるセリフだ。こん棒を持っているイメージは日本の鬼と同じだが、箒に変身するという伝承がトッケビにはあるようで、興味深かった。

イ・ドンウク演じる死神が洗濯物を取り込みながら歌った「도깨비 빤스(トッケビパンツ)」の歌には爆笑した。日本の童謡である「鬼のパンツ」の歌詞と少し似たところもあるが、曲はまったくの別物だ。「トッケビパンツは丈夫だよ。頑丈で丈夫だよ」「トッケビパンツは汚いよ。臭いがして汚いよ」と楽しそうに歌を歌う死神とうろたえるキム・シンの姿を思い出すとつい笑みがこぼれる。

tvN『鬼<トッケビ>』公式サイトより

2. 死神(저승사자(あの世の使者))

黒のつば広帽子をかぶった黒ずくめの怪しげな人物。死者を黄泉の国へ送る使者である死神といえば冷酷で恐ろしいイメージがあり、ドラマ『鬼<トッケビ>』第1話に初めて登場した死神(イ・ドンウク)はそのような雰囲気を漂わせていた。しかしトッケビと同居を始めてから明らかになる死神の生活スタイル。死神の仕事は天から与えられたものであり、給料をもらって仕事をし、同僚もいる。人間と同じように衣食住が必要だという、面白い設定だ。300年もの間、死者を「이승(この世)」から「저승(あの世)」へ送り届ける仕事を黙々とこなす死神。死神の死者への眼差しは温かいが、悪人には容赦ない言葉を浴びせたりもする。数え切れないほどの人の死を見届けながら何を感じ、何を思うのか。

死神には名前もなく、記憶もない。「前世で大罪を犯すと死神になる」という。キム・シンと一緒に暮らすうちに友情が芽生え、「저승(チョスン)」と呼ばれるようになる死神。運命の女性であるサニー(ユ・インナ)に出会い、自身の名前や記憶を知りたいという気持ちが生まれると共に、己の記憶にはない過去の大罪について苦悩する。死神が犯した大罪とは一体何なのか。13話で過去の記憶と向き合うイ・ドンウクの神懸り的な演技に心がすっかり奪われてしまったのは、筆者だけではないだろう。

tvN『鬼<トッケビ>』公式サイトより

3. 記憶(기억)

トッケビは自身が人間キム・シンだった頃の記憶、トッケビに転生してからの記憶をすべて持ったまま900年以上もの時を生き続けている。高麗時代に武神だった自身が殺めた敵の死、自身が守り切れなかった自身の愛する部下や家族の死、自身が仕えていた幼い王からの命令で非業の死を遂げた自身。転生し、剣を抜くことができる「トッケビの新婦」を探し続けるトッケビだが、不老不死の生を終わらせるために新婦を探すというのは何とも切ない話。「トッケビの新婦」であるウンタクに出会い惹かれていく中で、自身の運命に対峙し、ウンタクを愛し共に生きたいと願うようになるトッケビの姿に胸が熱くなった。

記憶がある者とない者。すべての記憶が鮮明であるがために苦しみながら生き続けるトッケビと、名前も記憶も喪失したまま死者をあの世に送り届ける仕事に従事する死神。一体どちらの苦しみが深いのであろう。記憶があること、記憶がないことは神が彼らに与えた罰なのであろうか?記憶というものの存在価値について深く考えさせられた。

4. 転生(환생)

「人間には4つの生がある」ドラマの中で出てくるセリフの1つだ。
キム・シンが非業の死を遂げた高麗時代に登場した人物らが誰に転生したのかについて視聴者の間で様々な予想が飛び交った。特に、キム・シンに死を命じた幼い王であるワン・ヨ(キム・ミンジェ)、幼い王を巧みな話術で操りキム・シンを亡き者にした奸臣パク・ジュンホン(キム・ビョンチョル)、そして王妃(キム・ソヒョン)が誰に転生したのかに視聴者の関心は集中。死神(イ・ドンウク)、サニー(ユ・インナ)、死神の後輩ら、キム秘書(チョ・ウジン)の前世などが話題となった。ワン・ヨが現世で誰に転生したのか気になるキム・シンに「なぜ同性に転生したと考える?異性に転生したかもしれないぞ」と話す死神の言葉が伏線だととらえ、異性に転生したのでは?と考える視聴者も。

tvN『鬼<トッケビ>』公式サイトより

不思議な行動を続けるユ・ドクファ(BTOBのユク・ソンジェ)の正体についても様々な推測が上がった。至るところに散りばめられた伏線が繋がりユ・ドクファの正体が明らかになっていく過程も絶妙で、ユク・ソンジェの演技の幅広さにも驚かされた。

5. 切実さ(간절함)

「人間の切実さはドアを開けるんだなあ」
不可能なことを可能にした人間の姿を見て驚いたキム・シンが呟いたセリフだ。
ろうそくの火を吹き消す行為も切実さの象徴のように思える。韓国では願い事をしてから誕生日ケーキのろうそくの火を消すと願いが叶うと考えられているからだ。
ウンタクが19歳を迎えた日、海辺で願い事を3つ唱え誕生日ケーキのろうそくの火を吹き消すとトッケビが現れた。その後もウンタクがあらゆる火を消すたびにトッケビはウンタクの後ろに現れた。「願えば叶う」というメッセージのように感じられた。もちろん何かを切実に願ったからすべてが叶うというわけではないが、何事もやってみなければ分からないのではないか?
「切実さはドアを開ける」。運命を切り開くために必要なものは、何かを切に願う強い気持ちなのだとはっとさせられたシーンだった。

tvN『鬼<トッケビ>』公式サイトより

以上、5つのキーワードでドラマ『鬼<トッケビ>』の世界を紐解いてみた。
最終話まで息を飲むようなストーリー展開に翻弄されながらも、登場人物と一緒に笑ったり泣いたりしながら視聴することができたこの2か月間は本当に幸せな時間であった。2016年の終わりから2017年の始まりに『鬼<トッケビ>』という素晴らしいドラマに出会えたことに心から感謝したい。

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